この席で金正恩委員長は、「経済建設と核戦力建設の並進路線の偉大な勝利を宣言することについて」という決定書を示し、満場一致で可決したと言うことです。
この決定書には、「核実験中止は『世界的な核軍縮に向けた重要な過程』であり、北朝鮮は『核実験の全面中止のための国際的な努力に合流する』として『わが国に対する核の威嚇がない限り、核兵器を絶対に使用せず、核兵器や核技術を移転しない』として『透明性を担保するため』豊渓里の核実験場を廃棄する・・そうです。
金委員長は朝鮮半島の緊張緩和と平和に向け、「劇的な変化」が現れているとして、「(北朝鮮の)核戦力の兵器化の完結が検証された」と述べ、「もはやいかなる核実験や中長距離・大陸間弾道ロケット(ミサイル)試射も必要なくなり、核実験場も使命を終えた」と述べましたが、核保有国としての立場は変えておりません。
すでに3回の核実験で、どっちみち豊渓里の核実験場はもう使い物にならないのではないでしょうか。
先日河野太郎外相が「まだ核実験の動きがある」と示したのは、実は核実験場から別の場所へ使えるものを移していたとも考えられます。
また、ICBMなどは「宇宙開発を進める」という理由で再開することは可能ですし、今回の北朝鮮の発表は、トランプ政権を騙し経済再建という理由で金をせびる手段だとしか思えません。
また、トランプ大統領はこの騙しに乗ってしまうのでしょうか。
核実験場から何がどこへ運び去られたのか、アメリカのステルス偵察機の情報で、行き先を把握できているのでしょうか?
もともと北朝鮮の各実験と立て続けに行われたミサイル発射は、「アメリカよ、北朝鮮を見よ」というメッセージ性の強いものでしたから、今回米朝会談にこぎつけた金委員長としては半分は目的を達成したようなものです。
トランプ大統領からすれば、核放棄がうまく行って北朝鮮がアメリカ側に取り込めれば「宿敵・中共」に対する強力なボディブローになりますし、秋の中間選挙に向けてのバックアップにもなります。
トランプ大統領側が、核実験の場所を他に移したり、研究施設を残したりしている航空写真のような証拠を持っていれば、それを示して査察の受け入れを迫り、「リビア方式」を受け入れるように交渉することも可能ですが、証拠が無ければ金委員長の言う事に反論がやり難く、議論負けになる可能性もあります。
この場合、アメリカ・3度目の失態となって中間選挙には不利になってしまうかも知れませんね。
しかし、これでトランプ大統領が「金委員長の非核化」を受け入れざるを得なくなったとしても、北朝鮮の最大の目的は「経済支援」ですから、それだけで会談を終わらせることは出来ないでしょう。
トランプ大統領は、「核の問題はそれで良いとしても、経済支援は日本がやることになっている。しかし貴国と日本との間には「拉致問題」があって、それを解決しない限り経済支援はなされないだけでなく、経済制裁は解除できないよ。お前さんも親父から大変な負の遺産を背負い込まされたものだな。どうするつもりだ」と振ればどうなるでしょうか。
おそらく金委員長は、「拉致問題はすでに解決済みだ。それをいつまでも問題としている日本側が異常なんだ。」と言うように思います。
トランプ大統領は、「日本には拉致被害を受けた者の家族が居るんだぞ。そして大勢の支援者も居る。ある意味で日本国民すべてが拉致問題を注視していると言ってよいだろう。そして彼らはすべて有権者なんだよ。民主主義がわからなければ理解できないかも知れないがな。ようするにこの問題をどう解決するかは、金委員長、あなたの手腕にかかっているんだ。」と述べるように思いますね。
金委員長は、「しかし拉致問題はもともと日本の活動家から持ち込まれた話だ。私はまだ子供で詳細は判らないけどな」とトランプ大統領に返したとしたら・・・
「そんなことを言って何になる。問題は現状北朝鮮に居る被害者全員を返すのか返さないのかだ。もしすでに死亡してしまった者がいるなら、それをどう日本に話し承服させられるかどうか、そこだよ。俺はシンゾーや、多くの日本国民に『拉致事件を解決する』約束をして今ここに居るんだ。」
これに金委員長がどう返事をするかどうかです。答えが曖昧なら大統領はそこで「じゃあ決裂だよ。経済制裁と軍事圧力は解除できない」として席を立って帰れば正解なのです。
もちろんここで金委員長から拉致被害者の生還が約束されれば、その場で「じゃあシンゾーに電話させろよ」として日本政府と繋ぐかも知れません。後は外務省の仕事になりますね。河野太郎外相に直接金委員長から約束させれば良いのですけどね。
北朝鮮は国際的約束を守る国家ではありません。ですから拉致被害者の調査を日本の警察が北朝鮮で行うことを北朝鮮側が受け入れて解決するまでは「経済制裁」解除はしてはいけませんけどね。