最近、ネット上に「量子コンピュータ」と言う言葉が現れています。コンピュータと言えば電子計算機のことですが、量子コンピュータとは何でしょうか?
これまではSF小説とかスピリチュアルな話などには出てきましたが、現実にそんなモノのがあるのかどうか、ちょっと疑わしく、そしてちょっと期待も出来るような話です。
量子は英語でカンタムです。ですからカンタムコンピュータと言うのがあるかどうかですが、実際にはフォトニクス・コンピュータとして現実に存在していました。つまり電子計算機ではなく光計算機です。
事のはじめはNTTの研究所から始まります。(NTTだけではないでしょうけど)
CMOS半導体の集約度を上げるために、極端な微細加工技術を追求していったところ。半導体内部の導線の太さを1ナノメーターに近づけると、電子的干渉が起きて回路が機能しなくなることが解ったそうです。
1mの千分の一が1ミリメーターで、1ミリメーターの千分の一が1マイクロメーターで、その1マイクロメーターの千分の一が1ナノメーターです。
現在TSMCが実用化に向けた挑戦をしているのが3ナノメーターの導線スケールでCPUを作ることです。武漢コロナウイルスがだいたい8ナノメーターですから、どのくらい微細な加工技術かが判ると思います。
それよりも微細な単位は1ナノメートルの千分の一で、1ピコメーターになりますが、100ピコメーター(つまり0.1ナノメートル)が1オングストロームになります。もはや量子レベルのサイズですね。
NTTの研究者は、微細加工を極めようと思ったのかどうか、電子回路として機能しないのが判っていながら、さらに微細な加工を求め、ついに0.1ナノメートルの加工までやってのけます。
そしてここまで微細に加工した半導体が、今度は電子ではなく、光に対して変わった動作をすることに気が付きます。
量子レベルまで進んだ加工技術。量子と言えば量子力学という理論があります。すなわち物質がナノメーター以下のサイズになると一般(ニュートン力学)とは異なる動きが出てくる、その振る舞いを力学的に研究した学問が量子力学です。
加工のやり方で光の屈折を同じにしないこともできる。周期的に変化させることも可能。これは、量子の持つ波動の影響が出ているからであることを突き止めた研究者は、さらにその異なった性質を並べて電子的に操作すれば光を閉じ込めることも可能であることに気づきます。
こうして作られたのがフォトニック結晶という加工物です。電子的に操作可能ということで、NTTを核としてインテルやソニーが組んで研究がさらに進み、今や世界中が競争する事態になっているようです。
そしてフォトニック・ダイオードやフォトニック・トランジスタなどが作られて行ったわけです。
コンピュータ回路は微細にすればするほどスピードは速くなります。何しろ光が3cm動く時間が勝負という世界ですから、ナノメータのサイズにすれば、より早くなるわけです。電子には干渉という限界があったわけですが、光を使うことでこの壁を破れたわけです。
この光だけを使った回路で、どこまで仕事をさせられるか、電子的な制御のための接続を少なくすることで、計算スピードは速くなります。
どうやら、このような考え方で超高速フォトニック・コンピュータが出来上がっているのだと思います。そしてこれを「量子コンピュータ」と呼ぶようになったようです。
この量子コンピュータが実現可能と判り、その計算速度がけた違いに早くなるであろうことが判ると、今度はソフトウエアの問題が出てきます。
特に暗号系の問題が大きく、現在一般的に使われている「公開暗号系」が安全ではなくなるという問題が発生しています。
公開暗号は、そのキーデータが従来のコンピュータであれば解読に何十年も掛かるということで安全が確保されていたわけです。しかしフォトニック・コンピュータが、その解読を数時間で行えるようになれば、もはや使うことは出来なくなります。
今後発展するであろう「デジタル貨幣」などは、暗号通貨と言って公開暗号系によって使われていたものです。しかしこの暗号系が使えなくなるとすると、どうやってデジタル貨幣の安全を確保するのでしょうか。
現在、さまざまなアイディアが出ています。時計仕掛のトークンを使うとか、スマホによる位置情報を使うなど、アイディアはあるようです。テストのような6文字トークンの配布が銀行などで行われております。
これは、その時の時間を暗号キー化したもので、銀行の時間とのマッチングでキーワードを送付し、それによって暗号解読が行われているようです。
時間から、その個人に対応したアルゴリズムを使って6文字のコードに変換するわけですね。両方の時間が」ずれますと、アクセスは出来なくなります。トークンの電池寿命が切れる前に交換が必要となりますが、今のところ問題はないように思います。
暗号系の問題は、その解読キーワードの転送が問題になります。解読キーワードも、本文と同様その解読者に送られますが、そのキーワードも暗号化しておかなければ盗聴した部外者に本文を解読されてしまいます。そこでこのキーワードの解読に公開暗号系が使われていました。
しかし、フォトニック・コンピュータ(量子コンピュータ)の可能性が高まったことで、この公開キーも数時間で解読されるようになりそうなのです。
暗号トークンは通信が発生しません。ですから盗聴は不可能です。そして一過性(時間が使われている)ですから、他人が見ても大丈夫です。次に使う時のキーは変わりますからね。
フォトニック・コンピュータ(量子コンピュータ)の時代は、もうそこまで来ているようですね。