原因はアメリカと中共が互いの通商政策を巡り譲らなかったからです。まあ、経済戦争中の両国ですから当然ですけど。
「各国がそれぞれの主張を他国に押し付け、保護主義や一国主義を正当化し、中共や他国の理性的な修正案を受け入れなかったことが主な原因」などと言っているのは中共の王毅国務委員兼外相の言葉ですが、中共の利益を持ち出せない法システムはいかがなものでしょうか。
アメリカ・ホワイトハウス側はこのような中共の見解について「完全に偏った解釈で、プロパガンダだ」と指摘しました。
今回のAPECで、中共側は習近平主席を送り太平洋諸国の首脳と会談した上で一帯一路構想をアピールしました。
これに対してアメリカはペンス副大統領を送り込み、日本、オーストラリア、ニュージーランドが合同で、パプアニューギニアに安定的な電力やインターネットを提供する17億ドルの計画を発表したのです。
ロイターによりますと、首脳宣言は「21カ国・地域のうち中共以外の20カ国は、最終的な文言に署名する準備ができていた」そうです。しかし中共側は「不公正な貿易慣行」と「持続可能な開発に関する内容」について反対し、結局まとまらなかったという事です。
ニューギニアの外交筋は「WTOへの言及が特定の国による不公正な貿易慣行への非難となっていることに中共は反発した」と述べたそうですが、それこそ中共が不公平な貿易をしている証になったのではないでしょうか。
APECに先立って行われた11月17日のペンス副大統領の演説で、「習近平国家主席には敬意を抱いている」とか「中共とはより良い関係を目指している」と述べた上で、中共の関税障壁や知的財産権の侵害を強く批判し、「中共が行いを正さない限り、アメリカは姿勢を変えない」と述べ、中共に対しさらなる制裁関税も辞さない立場を強調しました。
そしてインド太平洋諸国に対するインフラ支援を600億ドル(約6兆8千億円)規模まで拡大すると正式表明し、その上に域内諸国の汚職対策として4億ドルを拠出するなどの新施策を発表したのです。
その上で中共の関税障壁や知的財産権の侵害を強く批判し、「中共が行いを正さない限り、アメリカは姿勢を変えない」と述べ、中共に対しさらなる制裁関税も辞さない立場を強調しました。
そして中共がインド太平洋地域を含む世界全域で巨額融資を行い、相手国を債務不履行に陥らせる「借金漬け外交」を展開していると改めて批判し、「主権や独立性を損ねるような債務を受け入れてはならない。アメリカはそのような行為はしない」と、中共の闇金外交を非難したのです。
これより前にトランプ大統領は「中共がこのような行いを糺せば、直ちに関税を戻す用意がある」と述べております。マスコミは「トランプ大統領、対中関税の中止を示唆」などと書かれていましたが、今回のペンス副大統領と同じ発言を違う言い方で述べただけでした。
つまりトランプ大統領は対中経済戦争を終わらせるように動きたいようですが、なにしろアメリカ議会と国民が反中となって共和党を支持しておりますし、民主党の議員も対中強硬策を支持している議員が多く居るようですから、米中経済戦争は今後ますます激化する可能性の方が高いと思います。
ペンス副大統領のAPECでの演説は、このようなアメリカ国民の意思を表明したものとして意味があったように思います。
11月30日から12月2日まで、アルゼンチンでG20の集会があります。このために、ここでトランプ・習会談が組まれておりますが、ここでトランプ大統領が安易な妥協をしないように、また習政権が更なる妥協をするように、ペンス副大統領が先行して対中非難を行ったと言う見方もあるようです。
トランプ大統領が対中経済戦争の終結条件として提示した142項目から成る「行動計画」に対して、習政権は回答を示してきたそうです。
これに対してトランプ大統領は、「中共に関税をこれ以上科す必要はないかもしれない。中共も取引成立を望んでいる」と述べ、交渉への意気込みを示しました。
しかし同時にトランプ大統領は、「重要な4、5項目が除外されている。私にとってまだ受け入れられるものではない」とも語り、中共の更なる譲歩を求めております。
外れているものは、どうやら技術の窃盗や、知的財産権侵害を伴う先端産業育成計画、「中共の製造2025」の抜本的な見直し・・であって、これらについて習政権が拒否していると言う事のようです。
今回の戦争はもともと「技術の窃盗」と「知的財産権侵害」に対するトランプ政権の怒りから始まったもので、それ以外の問題はあまり関係はありません。
アルゼンチンの会談で、どのような交渉が行われるのか、はたして中共はこの2点を呑むのかどうか、今月末はアルゼンチンに注目ですね。