松竹系で3月6日から公開されていますので、もうご覧になった方も居るでしょう。
現在もまだ放射性物質による汚染水は発生し続け、それを浄化処理した水を貯蔵するタンクは増え続けています。
この水にはトリチュウム(重水の一種で中性子を2個含む)が含まれているために、微量の放射性があるので捨てられいというのが理由ですが、その濃度は公表されず、他国の原発では海に捨てているものです。
原発反対の活動かによって危険性が誇張されているのが現状のようです。
話が逸れましたが、映画はあの東日本大震災の発災時から始まります。そしてそこで奮闘する吉田本部長と伊崎利夫第一原発1・2号機当直長を中心にドラマが展開されます。
吉田本部長は参議院議員の青山繁晴氏がネットの番組でインタビューしていましたから顔をご存知の方も多いでしょう。(映画では渡辺健氏がやっています)
発災まえから癌の告知を受けていて、インタビューの後で青山氏が「彼は癌である」ことを明かしていました。
この映画では、現在の日本がいかに危機管理が甘いかを問いかけています。つまり行政に危機管理に関する「別次元の体制」がまったく無いことを露骨に表現しています。
目の前で起きている国家の危機に対して、行政の元締めである内閣府が機能せず、また東京電力の体制も現場に責任を押し付けるような無責任な対応が強調されていました。
面白いのは、この映画の中で「内閣総理大臣」とだけ表示されていましたが、「菅直人首相」という言葉は出てきませんでした。何かを忖度しているのでしょうかね?
しかし観客は衆知のことですから、この時の首相と言えば「菅直人首相」であることは知っております。(映画では佐野史郎氏がやっています)
地震から派生した大津波によって、発電所は大被害を受けます。補助電源が破壊され冷却水の循環が止まり、原子炉の中の温度が高くなります。
金属が高温で水と酸化反応を起こし、水から酸素分子を奪って水素分子が放出されます。気体となった水素が炉心に充満し炉心の内圧を高めます。
冷却循環が故障し、このような事態が起きた時のために「ベント(ベンチレター)」が非常用に取り付けられています。ところが電源が消失しているためにこのベントが電動で動きません。方法はただ一つ、人が行って手動で開けるしかありません。
ここがこのノンフィクションドラマのクライマックスです。ベントを空ければ放射性の塵がまじった水素ガスが放出されるために、地域の住民の避難が最重要となります。
非難する住民たちと炉心内のい圧力の高まりが緊迫感を演出します。そして非難が終わるまでの給水による炉心冷却。何とか電源車を手配してポンプを回し冷却を続けますが、そこに政府・官邸から「水が反応して余計に水素が出るから止めろ」とか「首相が現場に行くから対応しろ」などという指示が東電本部から吉田本部長(所長)に届きます。
こんな緊急事態に首相の訪問などが行われ、戸惑う現場が表現されていました。そしてやっとの思いで一か所のベントを開けることに成功しますが、もう一か所は放射能漏れが激しく近寄れません。そして遂に水素爆発が起きてしまいます。
負傷者の救護を行う現場に、東電の本店から様々な指示がなされますが、現場はそれどころではなく、ついに吉田本部長は本店と対立、怒号が飛び交います。
その後2機の水素爆発があったようですが、現場はそれでも対策を講じ何とかしようとしています。
東電本店から「吉田君、これは命令だ!」などという言葉が出てきますが、軍隊ではない東電の内部ではあまり意味はないのではないでしょうか。「責任は俺が持つ」という言葉は無く、ただ狼狽と右往左往と責任者の責任逃れがよく表現されています。
やっと炉内の圧力が下がり、歩と段落したところでこのドラマは終わります。ラストシーンが吉田本部長の葬式にしたのは何故なのかよくわかりませんが・・・
原子炉の事故は冷却機構のトラブルが原因です。スリーマイル党の事故もチェルノブイリの黒鉛炉も、結局は冷却機構が止まったために起きております。
福島のトラブルも被災による電源消失から冷却水が止まって起きた事故でした。
つまり安全な原子炉は冷却をしなくて良い原子炉ということになります。それが超高温原子炉と言う訳です。
冷却はせずに超高温に耐える素材でつくられた原子炉で、熱交換にはヘリウムガスを使います。
すでに試作機は出来ているようですが、原子炉と言うだけで一般の拒否反応が強く実用には至っておりません。
この原子炉なら海岸でなくても、例えば国会議事堂の地下にでも作れます。
この映画で、事故の原因が「冷却水を使う」という点にあることが判っていただければいいのですけどね。映画は決して反原発映画ではありません。ただ見方によっては「原発が怖い」と感じる人も居るでしょうけど。