対する海保は、アメリカ製の無人機「ガーディアン」を検討し始めたとか。
ガーディアンとは、ジェネラル・アトミクス・エアロノーティカル・システムズの洋上監視型無人機で、プレデターの後継機であり、攻撃能力が無い洋上監視に特化した無人機です。
ステルス型であることは当然ですが、飛行時間がプレデターよりも5時間も長く40時間は飛行可能と言うことです。
グローバルフォークは34時間ですからそれよりも長いようです。また、グローバルフォークは高高度からの偵察になりますが、このガーディアンはもう少し低空での監視で、沿岸監視に向いているようですね。
このガーディアンのもとになったのはプレデター後継のMQ-9リーパー(監視し攻撃もする)から派生した監視のみの無人機だそうです。
今年3月に幕張メッセで行われた「ジャパン ドローン2018」にこのガーディアンが展示され、ジェネラル・アトミクス・エアロノーティカル・システムズのアジア・太平洋地域国際戦略開発担当副社長のテリー・クラフト氏が日本に対して提案を行なったそうです。
尖閣防衛だけでなく、最近は北朝鮮船舶の「瀬取り」などの監視も担当し、不審船舶の監視、さらに離島などへの侵攻の監視も負わされている海保にとっては、任務遂行の合理化として必要と見ているようです。
プレデターMQ-9リーバーのような攻撃能力を持つと、海保の権限を越えてしまいますから、監視のみに特化したガーディアンには魅力を感じているようです。
不審な船舶を見つけしだい速やかに接近し、可視光や赤外線などの光学カメラ、合成開口レーダーで撮影出来ますし、静止画だけでなく動画も撮影可能、船名や武器を始めとした搭載物、乗組員の様子などが分かるレベルの画像が撮影できるそうです。
そして夜間や悪天候時も運用可能で、静止画や動画は、人工衛星を通じてリアルタイムで陸上の管制室に届けられると言うのですから、今後さらに緊迫する東シナ海や日本海には必須のアイテムかも知れませんね。
ガーディアンは今後さらに改良されるそうです。
現在1,500mを必要とする離着陸時の滑走距離を、3枚プロペラから4枚プロペラへの換装、ブレーキ性能の向上、フラップなどの改良により、1,200m程度に短縮する計画があり、さらにドローンの運用上大きな問題の一つとなっている、民間の小型航空機との接触事故の危険に対して、自動衝突防止装置の研究開発が順調に進んでいると言うことです。
ガーディアンの最高時速は約440キロ、航続時間は増強型で40時間ほどになり、これは沖縄県・那覇空港から発進させるとオーストラリア北部までを往復させることが可能になる性能になると言うことです。
また、管制室からの遠隔操縦が基本となるそうですが、状況に応じて衛星利用測位システム(GPS)を用いた自動操縦にも切り替えられると言うことです。
海保の検討によると、監視活動の交代や機体の整備などを考慮すると、機体は最低でも3機が必要となるそうです。
この場合の価格は、管制室など運用システムを含めて「200億円」くらいだとか。他の軍用システムに比べれば安いと思います。
我が国は決して小さな島国ではありません。領海の広さは世界6番目で、領海および排他的経済水域(EEZ)を現在の巡視船や航空機、人員の数でカバーするにはもう限界だそうです。
衛星監視でも常時監視は不可能だそうで、何かが発見された場合に集中的にそこを監視可能にできる無人機の導入は、監視体制強化の一環として必要になって来たと言うことでしょうか。
海保関係者からは「われわれは尖閣や日本海をはじめ、多方面で対応していかないといけない。一般的に言えば、無人機の利用は効率的だ」との意見も聞かれるようになってきました。
最南端の沖ノ鳥島や小笠原諸島の周辺海域(いずれも東京都ですよ)においても中共の違法漁船に操業され、2014年には赤サンゴを大量に盗まれ、それでも我が国は指をくわえて見ているしかなかったことが思い起こされます。
この2014年に防衛省は無人偵察機の導入機種を選定しました。この時このガーディアンは飛行高度が13700mで、小型飛行機との衝突が懸念され、高度2万mのグローバルフォークが選ばれたという経緯があります。
グローバルフォークは2021年から三沢基地に導入される予定ですが、この価格が3機体制で629億円です。
これと比べればガーディアンは安上がりで、しかも14年に問題となった小型飛行機との衝突については、自動回避装置を取り付けるようになるなどの改良が加えられるそうです。
防衛の合理化は、海に囲まれた我が国にとって、避けては通れない問題だと思います。